リアセンターとホイールベースが「長い」ほど、
自転車の安定性がアップし、ロングライドやツーリングに向く
リアセンターとホイールベースが「短い」ほど、
自転車のクイックなハンドリングや加速性能がアップし、レースなどに向く
一般的には、こう言われているのではないかと思います。
この記事に来られた方であれば、すでにご存知のことかとは思うのですが、いちおう説明をしておくと・・・
自転車は、ホイールベースは、ざっくりと言うと、ホイールとホイールのあいだの距離、
リアセンターは、ざっくり言うと、クランクの軸からリアホイールまでの距離です。
そしてリアセンターが長いと、身体からリアホイールまでの距離が長いことになり・・
力がダイレクトに伝わりにくくなったり、
そのかわりクッション性があがり、振動による身体へのダメージが少なくなったりします。
そのため、レース用ロードバイクのフレームでは、リアセンターを極限まで短くするため、
フレームの一部をへこませるような構造にして、さらにリアセンターを詰める・・という方法をとっているフレームさえあります。
一般的には上のように、ホイールベースやリアセンターの長さが乗り心地に直結する!と言われることが多いのですが・・
それは、果たして本当なのか?
そして本当だとして、どの程度の影響があるのか?
と、思ったので・・
実際に、ホイールベースとリアセンターを変えることができる自転車を使って、自分の身体・自分の感覚で検証してみました。
乗り心地などの感じ方は人それぞれですので、
この検証もひとりぶんの感覚による検証になってしまう・・・ということは、ご了承ください。
目次
こうやって、リアセンター・ホイールベースを変更した
自転車は、私が所有するロードバイクです。
フレームとしては、SURLY社の「CrossCheck」、フレームサイズは54cmです。
(カテゴリーとしては「シクロクロス」なのですが、わかりにくくなってしまうため、この記事では「ロードバイク」と表記します)
SURLY社 公式ホームページより引用
カタログ上のホイールベースは「1014.3 mm」、リアセンター(チェーンステイ長と同じ)は「425.0 mm」となっていますね。
それぞれ、一般的な平均から考えると、長めだと思います。
そして、このロードバイクのフレームは、
「ロードエンド」という、リアホイールを前から後ろに向かってはめこむ構造になっています。
昔は、よく使われていた規格だったそうなのですが、
現代のロードバイクは、ほとんどが「ストレートドロップエンド」という、リアホイールを下から上にはめこむ構造になっており、
現代ではあまり見られない規格のようですね。
このロードエンドの自転車は、ホイールを浅くはめこむのか、ホイールを深くはめこむのか・・によって、
簡単に、ホイールベースとリアセンターを変化させることができるのです。
上の画像のように、エンドにおもいっきり浅く固定した場合と・・・
上の画像のように、おもいっきり深く固定した場合とでは、
リアホイールの位置が前後に変わるため、そのぶんだけ、
ホイールベースとリアセンターが、長くなったり短くなったりするのです。
いちばん短く固定した場合と、いちばん長く固定した場合とで、
距離的には「3cm」の差がありました。
たった3cm・・と思われるかもしれないのですが、
リアセンターはたった数ミリ違うだけでも影響が出ると言われていおり、
3cm・・つまり30ミリも違えば、相当な影響がでるはずだ・・と思われます。
そして、ホイールベースやリアセンターが違う、複数の自転車を乗り比べる場合と違って・・・
同じ自転車でホイールの固定位置だけを変えるわけですので、
ほかの条件はいっさい変えずに、ホイールベース・リアセンターだけを変えることができます。
そのため、ホイールベース・リアセンターによる違いだけを評価することができると思います。
乗り比べると・・こんな感じだった!
・・・というわけで、乗り比べてみました。
結論から言うと、ものすごく大きな違いがありました。
ホイールベース・リアセンターを短くした場合と比べた、
「長く」した場合の感想としましては・・・
走行中、明らかにハンドルを切るときの抵抗力が強くなり、
直進する自転車を、安定させる力がアップしているのがわかりました。
手放し運転をしてみても、「長い」ときのほうが明らかに安定し、
長い距離でもかんたんに手放しで自転車をコントロールすることができました。
「短い」ときは、手放し運転である程度の距離を進むとバランスを崩し、ハンドルを握らざるをえなかったので、
大きな違いがあったと思います。
段差を越えるときの衝撃も、「長い」ときのほうが、明らかにマイルドです。
びよん、とフレーム全体がしなるようにして、衝撃を吸収しているのがはっきりと体感できました。
そして「長い」ときのほうが明らかに、加速力が低下しているのがわかりました。
「短い」ときは、脚に力を入れた瞬間にビュンと加速するのに対して、
「長い」ときはわずかに遅れてホイールに力が伝わり、そこからじわっと加速する感じです。
ホイールベースが「短い」ときの感想は、
すべて「長い」ときの真逆ですね。
すばやくハンドルが切れるので、すばやく自転車を曲げることができますし、
瞬時に加速することができるので、すごくサクサク自転車を操れる感じがして、
そういう意味でとても快適です。
確かに、レースをやるのならホイールベース・リアセンター、特にリアセンターはできるだけ詰めるべきなんだな・・と、
体ではっきり知ることができました。
私はレースをすることはなく、自転車は旅やロングライドに使いたい派です。
そして、ホイールベースやリアセンターが「長い」自転車のほうが、そういう用途には有利だと考えていたので、
基本的に「長く」するようにしていました。
今回、その方向性は間違っていないかったことを、じっさいに体感して確認できましたし、
場合によっては、さらにリアセンターが長い自転車(SURLYなら、ロングホールトラッカー)が、欲しくなってくるかもしれません。
ホイールベース・リアセンターを3cm変えたことによる影響は、
想像していたよりもずっと大きかった・・というのが、個人的な感想です。
クイック・加速性に優れた自転車が好きなのか、直進安定性に優れた自転車が好きなのか・・・
レース派なのか、ロングライド派なのか、それともバランス派なのか・・・
好みや性格、自転車をどのように使うのかといった用途、などにあわせて、ジオメトリー表を読み、
どのくらいのホイールベースやリアセンターにするのか・・・ということを考えながら自転車を選ぶと、
納得のいく自転車が手に入るのではないか、と思います。