昨日までは正常に動いていた変速機(リアディレーラー)が、
今日は、うまく動かなくなっている。。。
よく、あることだと思います。
変速機・・特にリアディレーラーは、自転車パーツの中でも1、2を争うほど繊細な部分で、
ちょっとした衝撃や負荷でも、かんたんに狂ってしまいます。
狂い方としては・・変速レバーを操作したのに、変速が完了せず、チェーンがギアの上でうるさい音をたてて暴れたり・・といったことが、
一番多いでしょうか。
もちろん、リアディレイラーが狂ったなら、調整すればいいわけですが・・
ハンドルまわりやサドルまわり、ペダル、チェーンなどなど、
自転車のほとんどの部分は、とてもシンプルなつくりをしており、
構造を理解しづらいということは無いと思うのですが・・
「変速機」だけは、なかなかに複雑な構造のものなので、
調整しようとしても、とっつきにくいと思います。
調整方法の情報としては、例えば「シマノ公式の説明書」といったものも探せばありますが・・
ちょっとごちゃごちゃしてしまって、「どうすれば、最低限の手順でさくっと調整してしまえるのか」といったことは、わかりにくいかもしれません。
なのでこの記事では、リアディレイラー調整の手順をできるだけシンプルに解説していきます。
目次
「一箇所」だけを操作し、狂った変速機を調整する
まず、そもそもディレイラーがどのようにして、変速をしているか、なのですが・・・
ディレイラーは、現在チェーンがかかっているギアから次のギアに、
チェーンを「脱線」させることで、変速をさせています。
イメージとしては、チェーンが、スプロケットの階段を上り下りしているような感じですね。
この、歯車の階段を・・・
チェーンという名の人間が、
一段ずつ、上ったり下りたりしている感じです。
そしてチェーンが、階段の次の段に、ちょうどの「歩幅」で乗ることができるとき・・
変速はスムーズに、すぱっと決まります。
しかしながら、さまざまな理由で、
次の段に乗ろうとするチェーンの「歩幅」が、狂ってしまうことがあるのです。
歩幅が大きすぎて、階段の、一段ぶんよりも大きく足を踏み出してしまう場合・・
人間の場合と同様に、うまく、階段を上り下りすることはできません。
逆に歩幅が小さくなりすぎて、一段ぶんよりも小さくしか足を出せない場合・・
これも、うまく上り下りすることはできないです。
そして、この階段の「段の大きさ」は、
使用するスプロケットによって微妙に違ってくるので、
自転車のリアディレイラーには、この「歩幅」の調整機能がついているのですが・・・
この「調整」が、はじめからできていなかったり、たとえば衝撃などにより狂ってしまったときに、
チェーンは階段の次の段にうまく移動することができなくなり、「変速がうまく決まらない」・・ということになるのです。
この場合には、チェーンが、ジャストで次の段に乗ることができるよう、「歩幅の調整」をしてあげることが重要なのですね。
この「歩幅」を調整するのは、
「インナーワイヤーの張り具合」です。
インナーワイヤーが強く張られているとき・・・
チェーンは、大きな歩幅で、スプロケットという階段を上ります。
対して、インナーワイヤーの張りが弱いとき・・・
チェーンがスプロケットを上る歩幅は、小さくなります。
当然、歩幅が大きすぎても小さすぎても、ジャストで次の段にのぼることはできなくなりますから、
インナーワイヤーの張り具合がちょうどよくなるように、微調整をしなければならないのです。
インナーワイヤーの張り具合は、
「テンション調整ボルト」を回して、調整します。
上の画像の、赤丸で囲んだものが、テンション調整ボルトですね。
これを、リアディレイラーの側に向かって、時計回りに回すと、
シフトワイヤーのテンションは緩み、
チェーンの「歩幅」は小さくなります。
対して、リアディレイラーの側に向かって、反時計回りに回すと、
シフトワイヤーのテンションが強くなり、
チェーンの「歩幅」が大きくなります。
(回す方向は、パーツの型番などにより変わる可能性がありますので、
実際に作業するときには、ご自身にてご確認ください)
これだけのことを理解していれば、
ほとんどの場合で、このテンション調整ボルトを指で回すだけで、
うまく変速ができるようになります。
作業をするときには、ペダルを手でぐるぐる回しながら、
変速機を操作します。
後輪を浮かせることができる、メンテナンススタンドがあれば、
より効率よく作業ができると思います。
変速機を操作しても、チェーンが、移動するべき段まで移動することができず、
チャリチャリと鳴りつづける場合・・・
チェーンの「歩幅」が小さすぎるわけですので、
テンション調整ボルトを反時計回りにまわして、シフトワイヤーのテンションを上げてあげれば、
チェーンは、ちゃんと移動するべき段まで移動するようになり、変速が完了するようになります。
対して、変速機を操作すると、チェーンが移動するべき段を越えて、その次の段まで移動してしまう場合・・・
チェーンの「歩幅」が大きすぎるので、
テンション調整ボルトを時計回りにまわして、シフトワイヤーのテンションを下げれば、
チェーンが移動しすぎないようになり、変速がうまく完了するようになります。
テンション調整ボルトは、いちどに1/4回転くらい回すのを、繰り返すといいでしょう。
シフトワイヤーの張り具合に、「正解」となる強さはありません。
そのため、このボルトを少しずつ回しながら、実際に変速を繰り返してみて、スムーズに正確に変速してくれるところを探していく・・という作業が必要となります。
この作業を繰り返して、チェーンが、ギアのすべての段において、
正確に次の段に載れる・・という、シフトワイヤーのテンションを探し出します。
上記の方法で、チェーンの「歩幅」がおかしいことによる変速の狂いは、解消することと思います。
注意点としては・・実際に人間が乗ると、
また微妙に、シフトワイヤーのテンションなどが変わってしまうことがあります。
そのため、人間が乗らない状態ではうまく変速できたけど、実際に乗ると変速がまた狂った・・という場合は、
さらにテンション調整ボルトを微調整して、
「人間が乗った状態で、正確に変速する」ところを探しましょう。
実際には、走りながら変速を試して、止まってボルトを調整して、また走りながら変速を試して・・の繰り返しになると思います。
走っている最中に、変速がうまくキマらないことに気がついた場合は、
このテンション調整ボルトを回すだけで、あっさりと解決することも多いです。
また・・テンション調整ボルトを、完全に締まるところまで締めこんだり、もしくは抜けてしまうところまで緩めたとしても、
うまく調整が完了しない場合・・そもそも、ワイヤーを固定する長さを大きく間違っている可能性があります。
その場合は、いちどシフトワイヤーを固定するボルトを外して、
だいたい、まともに変速してくれる長さを探して、固定しなおします。
あまり強い力で何度もワイヤーを固定すると、ワイヤーが潰れてしまうので、
弱い力でボルトを締めて仮止めし、変速を試してみて、
うまく変速するところを見つけてから、ちゃんと固定する・・という方法が良いと思います。
だいたい、まともに変速するところでワイヤーを固定できたら・・
そこから、テンション調整ボルトを回して、きっちりと変速するように調整を完了します。
シフトワイヤーのテンションは、さまざまな理由で、
けっこう簡単に変わってしまうものです。
新品の場合、「初期伸び」によって長さが大きく変わってしまうこともありますし、
その後も使用にともなってすこしずつ伸びるので、少しずつテンションは低くなってしまいます。
そのため、これまではうまく変速できており、何かにぶつけたりしたわけでもないのに、なんだか変速の調子が悪くなってきた・・という場合には、
とりあえず、シフトワイヤーのテンション変化を疑ってみるといいかもしれません。
チェーンがスプロケットの外側や内側に落ちてしまう場合
ここまでで、変速機調整にいちばん重要な、
「シフトワイヤーのテンション」の調整方法をお伝えしたのですが・・・
変速機の調整で操作するべきところは、
テンション調整ボルトだけではありません。
テンション調整ボルトだけで、解決してしまうケースも多くあるとは思いますが・・・
テンション調整ボルトだけでは、どうしても最後まで調整しきれない種類の狂いもあるのです。
代表的なものとしては・・・
チェーンの、「全体的な作動幅が大きすぎる」場合です。
つまり、チェーンが、トップギアを越えて外側に移動し、落ちてしまったり、
一番内側のローギアを越えて内側に移動し、落ちてしまったり・・という場合ですね。
このような場合は、チェーンの作動幅が大きすぎますので、
作動幅を調整することになります。
作動幅に問題がない場合は、
この調整は必要ありません。
そして、この調整をする場合には、
いちど、シフトワイヤーを外してしまう必要がありますので、
行う場合は、まず最初にシフトワイヤーのボルトをゆるめ、外してください。
作動幅を調整するためのパーツは、
赤丸と青丸で囲んだ場所についています。
赤丸のプラスネジが、「トップ側調整ボルト」、
青丸のプラスネジが、「ロー側調整ボルト」、ですね。
まず、「トップ側調整ねじ」を操作します。
この部分は、チェーンが、トップ側でどこまで移動するか?を調節するためのものです。
チェーンが、いちばん外側のギアを越えてむこうまで行くと、チェーンはギアの外側に落ちてしまいます。
逆に、トップ側への動きが小さすぎると、いちばん外側のギアに、チェーンが乗ることができません。
そのため、トップ側調整ねじによって、ギアをトップに入れたときに、
チェーンが「いちばん外側のギアに、ジャストで載る」ように、調節すればいいのです。
目視で確認してもいいのですが、
実際に、手でペダルを回しながら、うまくギアの上に載ってくれるねじの締め具合を探していくほうがいいと思います。
もし、トップギアに入れたときに、チェーンがいちばん外側のギアに正確に載っているようなら、ここを操作する必要はありません。
次に、「ロー側調整ねじ」を操作します。
こちらは、チェーンが、ロー側でどこまで移動するか、を調節するものです。
トップ側同様に、移動が大きすぎると、チェーンはギアの内側に落ちてしまいます。
対して、移動が小さすぎると、チェーンはいちばん内側のギアに乗ることができません。
そのため、ギアをいちばん軽いギアに入れたときに、
チェーンが「いちばん内側のギアに、ジャストで載る」ように調節すればいいのです。
もし、一番低いローギアに入れたときに、チェーンがいちばん内側のギアに正確に載っているようなら、ここを操作する必要はありません。
ボルトを回す方向については、
シマノのディーラーズマニュアルがわかりやすいので、引用します。
「SHIMANO ディーラーズマニュアル」より引用
ここまでの調整をしたら、
チェーンの作動幅が、ジャストな幅になっているはずです。
ここまで終了したら、シフトワイヤーを装着しなおして、
最初にお伝えしたような方法で、シフトワイヤーを適切な強さで張りなおします。
ここまでで、基本的な変速調整が、完了するはずです。
どうしてもうまく調整できないなら
ここまででお伝えした方法で、だいたい、変速機が正しく動くようになるはずなのですが・・
注意点として・・
「ディレイラーハンガーが曲がっている」といった場合には、いくらシフトワイヤーのテンションなどを調整したとしても、うまく変速するようにはなりません。
ディレイラーハンガーとは、リアディレイラーとフレームを連結する金具部分のことです。
場所としては、上の画像の、赤丸で囲んだ部分ですね。
(この自転車では、フレーム一体型なので、「ディレイラーハンガー」として独立はしていません)
転倒などでリアディレーラーが大きなダメージを受けたときは、真っ先にここが歪み、
フレームやディレイラーへのダメージを防ぐようになっています。
それ自体は、良いことなのですが・・ここが歪んでしまうと、リアディレイラーの角度そのものが変わってしまうので、
その状態でいかにディレイラーの動きを調整したとしても、うまくいかないのです。
右側に倒れて転倒したあとや、輪行でぶつけてしまったあとで、変速調整がぜんぜんうまくいかないときは、
この「ディレイラーハンガーの歪み」を疑ってみるといいかもしれません。
ディレイラーハンガーの歪みは、手でぐいっと戻すことはできるものの、
ダメージがさらにひどくなる場合もあり、専用工具で角度を測りながら直すほうがいいので、
歪みを疑ったら、自転車ショップに持ち込まれることをおすすめします。
まとめ
以上、最低限の手順で、さくっとリアディレイラーを調整する方法をお伝えしました。
最低限の手順で、さくっと変速調整を完了するためには・・・
「テンション調整ボルト」に目を向け、
これを、手だけでさくっと調整します。
工具が不要ですし、仕組みさえわかっていれば、
いつでもどこでも調整ができますので・・
この方法が使えるようになれば、
いつもチャリチャリ鳴って、うまく変速してくれない変速機と、
我慢してつき合い続ける・・といったことは、しなくて良くなると思います。
※変速機の整備などは、あくまでご自身の責任にて行っていただきますようお願いします。
万一、当記事の内容を参考に整備を行い、トラブルなどにつながったとしても、一切の責任は負いかねますので、ご了承ください。