ロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイク・・
12速変速、Di2、ホローテック2といった最新規格・・
そしてママチャリ、電動アシスト自転車などの実用車・・
「現代」の自転車の世界はまさに今、見渡すことができます。
しかし・・「昔の自転車」って、どんなものだったの?
ここに興味を持つ人も、なかなかに多いようです。
私自身、そのうちの1人ですね。
もちろん性能が良いのは、現代の自転車です。
しかし昔の自転車には、昔の自転車ならではのロマンがあります。
昔の人って、どんな物を使っていたの?
そう思いを馳せるのは、自転車ならずとも楽しいものですね。
なのでこの記事では、昔の自転車ってどんな製品があったの?
どんな環境で、どんなふうに使われていたの?
ここを考えてみたいと思います。
目次
最古の自転車:ゴムタイヤなし時代
「昔の自転車」と言ったからには、いちばん古い時代から考えてみます。
とは言っても・・自転車の歴史は意外と短く、
1813年、ドイツのカール・フォン・ドライス男爵が“ドライジーネ”と呼ばれた木製のベロシフェールにハンドルを取り付け、走りながら曲げられる足蹴り式の二輪車を発明しました。現在ではこれが自転車の発明とされています。
こうあるように、19世紀初頭(1800年代初頭)から始まったとのことです。
そしてこういった初期の自転車には、
- ゴム製タイヤを装備していなかった
- 未舗装路を走っていた
- お金持ちの道楽アイテムだった
こういった特徴がありました。
まず・・自転車のタイヤといえば、ゴム製タイヤです。
しかし初期の自転車はそうではなく外周まで木製や鉄製の車輪で走っていたとのことです。
タイヤにゴムが使われ始めたのは1867年、やっと今から130年程前からである。
現在の空気入りタイヤが生まれたのは1888年、英の獣医ダンロップが息子の自転車タイヤに使ったのがはじめてとされている。
日本自動車タイヤ協会の該当ページより引用、一部を強調表示
こうあるようにゴム製タイヤ・エアタイヤといったものが発明されたのは、自転車そのものの発明より50年以上も後になります。
そしてその間はもちろん、ゴムタイヤ無しの車輪で走っていたということになります。
実際に、当時の自転車の画像はみんなむき出しの車輪になっています。
そして当時は道路が現代のように舗装されていなかったようです。
日本で最初のアスファルトを用いた舗装は、明治11年(1878年)
日本アスファルト協会の該当ページより引用
こう言われているように、アスファルトによる舗装が使われだしたのはゴムタイヤと同じく、自転車そのものの発明より50年ほど後です。
つまりその期間は、道は砂地・草地・石畳といった昔ながらの姿になっていて・・
自転車は、その上を走っていたわけです。
そして・・「ゴム製タイヤ無しのむき出し車輪」「未舗装路」という条件で、快適に走れるものか?
これはもう、簡単にイメージできるところだと思います。
もし現代で再現するなら、自転車からタイヤを取っ払い金属リムだけにして、公園の草地でも走ればいけますが・・
そんな条件で、速いスピードで疲れずに進めるわけがありませんよね。
さらには当時は移動距離を拡張する「ギア」が存在せず、少しペダルを回せば大きく進む!というシステムが実装できませんでしたので・・
こんな感じの「前輪が大きい」自転車にすることで、解決を試みたりもしていました。
ホイールを大きくすることでも、移動距離の拡張はある程度可能だからですね。
とはいえ・・このタイプもやっぱり重心が高すぎて乗るのが難しかったりで、実用性は低かったようです。
という背景があって・・その時代において自転車はお金持ちの道楽アイテムだったようです。
実用性がとても低く、まともに活用できたものじゃありませんので・・
実用度外視のオモチャとしてのみ、存在していたわけですね。
ちなみに振動のすごさから「ボーンシェイカー」なんてあだ名もついていたようです。笑
ちなみにその時代においては交通の主流は「馬や馬車」だったとのことです。
すべての道が未舗装で、草や砂や泥がむき出しになっているのなら・・
自転車より馬や馬車のほうがよほど、使い勝手が良かったわけです。
自転車なんて割とシンプルな人力機械なのに、何でこんなにも発達が遅かったんだ?
私自身、これをかなり疑問に思っていたのですが・・
「ゴムタイヤ技術」「アスファルト舗装技術」あたりの進歩が遅かったのが、その大きな理由と言えるみたいです。
というわけで、「最古」に位置する昔の自転車を見てみると・・
とても実用性高く走れるような乗り物ではなく、なので一部の趣味人のみに実用度外視で使われていた!
というのが、その姿の概要となるでしょう。
急激に「使える乗り物」になってきた
そして1880年くらいから、道路はどんどんアスファルト舗装され、ゴム製エアタイヤの車両が主流となり・・
「馬・馬車の時代」から「自転車・自動車の時代」への大転換を迎えることになります。
そしてこのあたりの時代から、自転車は「実用できる道具」の地位を得ることになります。
道が草に覆われていたころに比べ、アスファルトの上を優れたタイヤで進めるのなら・・
自転車は徒歩よりはるかに速い、圧倒的に便利な乗り物になるからですね。
その時代の自転車の姿は、
1879年にイギリスのローソンが前ギアと後ギアをチェーンで結ぶ駆動方式を発明。この方式を利用して1885年にジェームス・スタンレーの甥のジョン・ケンブ・スタンレーが“ローバー型安全自転車”を発売し“セーフティバイシクル”と呼ばれこれが現在の自転車の原型です。
こんな感じになりました。
ペダル・クランク・チェーンがあり、サドルがありハンドルがあり2つの大径ホイールを備え・・
その姿は大枠ではもう、現代の自転車とさほど違わないように思えます。
150年近く前にはもう、現代と似たようなスタイルの自転車がふつうに使われていた・・
というのは何かこう、感慨深いものがありますね。
さらにはこのあたりから10-20年も経たないうちに、
1885年(明治18年) ジェラールが折りたたみ自転車を開発(フランス)
1888年(明治21年) ダンロップが空気入りタイヤを自転車に装着し、特許を得る(イギリス)
1896年(明治29年) フリーホイール(ペダルを逆回転すると空回りする機構)の開発(イギリス)
1896年(明治29年) 内装2段のチェンジギアが発売(イギリス)
自転車文化センターホームページの該当ページより引用、一部を強調表示
エアタイヤ、フリーホイール、変速システム、折りたたみ機構・・と、現代に通じるようなシステムが次々搭載されていきます。
そして1900年にもなると中身的にも、現代と大きな差がないような機構が出来上がってきた、と言っていいでしょう。
自転車の王様「ロードバイク」の出現
日本で、趣味用の自転車と言えば「ロードバイク」が主流ですが・・
1890年代に入ると、レースの形態もバイクも急速に進化し、スポーツバイクの基礎が確立します。
1903年にフランスを一周するツール・ド・フランスが開始されました。
日本自転車文化協会の該当ページより引用
こんな感じでロードバイクの前身となるスポーツバイクは、1890年代-1900年代あたりに急激に普及することになります。
特に上の画像は、かの有名な「ツール・ド・フランス」の第1回で使われた自転車なのですが・・
形だけを見ると、ほとんど現代と同じでは?と思うくらい似ている気がします。
ハンドル形状など、もちろん違うポイントもありますが・・
実はツール・ド・フランス以前にも、自転車レースは色々あったようなのですが・・
前述したようにこれ以前の時代はゴムタイヤ・アスファルト舗装が無く、出せるスピードはたかが知れていました。
なのでクルマを越えるほどのスピードでレースをする時代は、ツール・ド・フランスあたりから始まったと言えるでしょう。
当時のスポーツバイクの「昔の自転車」と言えるような、当時ならではの特徴を挙げてみると、
- ビンディングは無し、トゥークリップが主流
- フレーム素材は鉄(古くはスチール、次第にクロモリが普及)
- 変速機が無い
- ホイールをナットなどで固定、クイックリリースではない
こんな感じになってくると思います。
逆にこれら以外の要素は、だいたい現代のロードバイクとそう変わらないと思われ・・
自転車が発明から、いかにハイスピードで進化したかが伺い知れる気がします。
戦前・戦後あたりの自転車事情
1900年代も半ば、つまり戦前・戦後くらいの時代になると・・
自転車はもう、現代とほぼ変わらなくなってきます。
1950年(昭和25年) 保有台数が1000万台を超える(日本)
自転車文化センターホームページの該当ページより引用、一部を強調表示
こうあるように・・そのくらいの時代には日本で、自転車は「主流交通手段」の座を確保するわけですね。
とはいえ形状から性能まで、現代とまったく同じというわけではありません。
版権の問題もありますので、サイトには画像をなかなか載せにくいですが・・
日本では1900年代に、こんな感じのさまざまな特徴的な自転車が流行したようです。
(上の各リンクは、クリックすると画像検索に飛びます)
中には、現代でも手に入るものもありますね。
ちなみにこういった、ちょっと古い年代の自転車は「アオバ自転車店」という漫画がかなり詳しいです。
私自身の、愛読書のひとつですね。
このあたりの昔の自転車の、現代の自転車とのいちばんの違いは・・
フレームが鉄製であること、です。
現代は特にスポーツ自転車だと、フレームはほとんどがアルミ or カーボンですが・・
アルミフレームやカーボンフレームが本格的に採用されだしたのは、1970年代・1980年代くらいのようです。
なのでそれ以前の時代はほぼすべてが、鉄製だったわけですね。
そしてフレーム素材の違いは、フレーム形状にも違いを生みます。
鉄製のフレームは「細身」「ホリゾンタル(トップチューブが水平)」という仕様になることが多く・・
これがちょっと昔の、レトロ自転車の見た目の特徴になることが多いわけですね。
という感じで・・昔の自転車って一体どんなものだったの?
いち自転車マニアとして気になったので、今回はここを調べてみました。