クロスバイクのドロップハンドル化は、けっこう、よくされるカスタムです。
クロスバイクを買ったけど、ロードバイクが欲しくなった、というとき・・・
「クロスバイクにドロップハンドルをつければ、ロードバイクになるじゃん!」
・・・というのは、誰もが一度は思うことだと思います。
例によって、私もそう思いましたし、
結局、それを実行しました。
具体的には・・・冒頭の画像のように、
「GIANT Escape RX」という、もともとバーハンドルのクロスバイクに、
ドロップハンドルを装着しました。
実際、それをやれば、ロードバイクに近いものができあがるのですが・・・
しかし・・「ドロップハンドル化クロスバイク」というのは、
実現するための改造も、なかなか難しく、
また完成したとしても、ふつうのロードバイクとはかなり違う、ピーキーな性能のものになったりします。
見た目、ほとんどロードバイクと一緒だし、
べつに、ロードバイクと変わらないのでは?・・・と、
もしかしたら、思われるかもしれないのですが・・・
まず、いちばんのポイントとしては、
「トップチューブ長」が、決定的に違ってきます。
クロスバイクのトップチューブは、かなり、長いです。
たとえば、GIANT TCR SLというロードバイクのトップチューブと、
GIANT Escape RXというクロスバイクのトップチューブとを比べてみると、
クロスバイクのほうが、2-3cmほど長いです。
これは、他のロードバイクとクロスバイクの比較でも、
だいたい、こんな感じです。
フラットハンドルは、前方向に短いですので、
ハンドルが近くなりすぎないよう、距離を稼ぐために、
クロスバイクではトップチューブを長くしてあるんですね。
そしてトップチューブ長というのは、ホイールベースやリアセンターと並んで、
自転車の乗り味に、ものすごく大きい影響を与えます。
なので、たとえばフラットバーロードとクロスバイクを比較しても、
トップチューブ長がぜんぜん違うので、まったく違う乗り味になってくるのです。
トップチューブがもともと長いクロスバイクでも、
前に短い「フラットハンドル」であれば、ちょうどいいわけですが・・
ここに「ドロップハンドル」をインストールするとなると、
ちょっと、話が違ってきます。
「クロスバイク」と「ドロップハンドル」を組み合わせると・・・
長いトップチューブと、長いハンドルとの組み合わせになるので、
ハンドルまでが、ものすごく遠くなるんですね。
ロードバイクと比べて、だいたい2cm、長くなります。
たった2cm・・と思われるかもしれませんが、
乗り味というのはポジションがたった数mm、違うだけでもかなり変わりますので、
2cm・・・つまり20mmも違えば、そうとうに変わってきます。
具体的には、トップチューブやハンドル、つまり「フロント部分」が長くなればなるほど、
自転車は「直進しやすく、曲がりにくく」なります。
なので、ロードバイクと比べて、安定性に極振りしたような、そのかわり機敏さを失ったような、
かなりピーキーな性能になるのです。
場合によっては、ハンドルが遠すぎて、手が届かなくなったりするかもしれません。
それならかわりに、ステムを短くすればいいのでは?・・と思われるかもしれませんが、
ステムを極端に・・つまり80mm未満くらいまで短くすると、
それはそれで、自転車は、変に不安定になっていきます。
なので、クロスバイクをドロップハンドル化するときには、
ロードバイクと比べて、トップチューブがやたら長い自転車になるんだ・・ということを、
把握しておくほうがいいと思います。
ちなみに最近ですと、GIANTからは「Escape R DROP」といった、
もともとクロスバイクに、ドロップハンドルをつけたような完成車も、発売されたのですが・・・
この自転車は、ジオメトリー表を見ていただければわかるのですが、
トップチューブ長が、「Escape R」や「Escape RX」よりかなり、短いです。
(フレームサイズにもよりますが、だいたい2-3cm短いですね)
つまり、「Escape R DROP」は、ドロップハンドル前提で、フレームジオメトリーから再設計された、
ふつうの「ドロップハンドル化クロスバイク」とはまったく別物だと思います。
ロードバイクと、ドロップハンドル化クロスバイクの、もうひとつの違いとしては・・・
基本的にキャリパーブレーキではなく、Vブレーキ仕様になる、ということですね。
ロードバイクは、ほぼすべての車種で、キャリパーブレーキが採用されているのですが・・・
(最近はディスクロードもでてきていますが、まだまだ、ほとんどがキャリパーです)
クロスバイクは、ほとんどの車種で、
キャリパーブレーキではなく、「Vブレーキ」が採用されています。
そして、Vブレーキ用のフレームに、キャリパーブレーキを装着することは、
基本的にできません。
なので、ドロップハンドル化クロスバイクでは、
Vブレーキを装着するしか無いのですが・・・
「ドロップハンドルのブレーキ」・・・つまりSTIレバーといったものは、
ワイヤーの引き量が、バーハンドルのブレーキより小さいので、
ふつうのVブレーキだと、ちゃんと動作させることができないです。
なので、ドロップハンドル化クロスバイクを作りたいなら、ふつうは、
「ミニVブレーキ」を調達しなければいけません。
そして、ドロップハンドルとミニVブレーキに組み合わせは、
公式に奨められている組み合わせではありません。
そのため、組み合わせるのは自己責任になりますし・・・
実際に、うまく動作する組み合わせかどうかは、組んでみるまでわからないところだったりします。
一応、参考として・・・
私は、GIANT Escape RXをベースに、
SHIMANO STIレバーの「ST-4600」と、ミニVブレーキとして「TEKTRO RX5」を組み合わせたところ、
トラベルエージェントとかの、引き量変換パーツといったものを使うこともなく、正常に動作させることができました。
また、上で紹介しました「GIANT Escape R DROP」は、
完成車で、STIレバーにミニVブレーキ、という組み合わせなのですが・・・
この記事の執筆時点で、「SHIMANO CLARIS」のブレーキレバーと、「TEKTRO RX1」ブレーキが組み合わされていました。
実際に完成車で、正常に動作するかは、ご自身で試していただくほか無いとは思います。
「クロスバイクのドロップハンドル化」は、ピーキーな性能になりやすいです。
また、難易度的なハードルもそれなりにあったりするのですが・・・
しかし、そのハードルを乗り越えていくのが楽しかったりしますし、
それでメンテナンステクニックも、上げることができるかもしれません。
整備スキルさえあるのであれば、
クロスバイクに簡単に、ロードバイク並の走行性能を持たせることができる、良いカスタマイズになるかもしれませんので、
チャレンジしてみてもいいのではないか、と思います。